星詠亭奇談第一部
First Stories

0.記憶
 始まりは、小さな違和感だった。
 それは、物心ついたときからずっと気になっていたこと。
 自分が他人と何か違うような、自分が何か人間でないような。
 その違和感は、他の子供達と遊んでいるときでも始終ついて回った。
 それを親に話してみると、親は恐ろしい顔をして怒り、それについては黙っているようにいわれた。
 やがて、あなたの元に迎えがやってきた。
 あなたは正確な意味では通常の人間とは違うことを親に告げ、そしてあなたをそのふさわしい場所につれていくためにきたことを。
 親は、その迎えのものに幾ばくかのお金をもらうと、よろこんであなたを引き渡した。
 以来親には会わず、同じような子供達のいる中で育てられた。
 それから幾年たっただろう。
 蒸気機関が発明されてルーン帝国はその版図を大きく広げ、そしてアーミテイツと対立するようになった。辺境に面するフィーラはあいもかわらず混沌の直中にあり、ミスカルは神那の影響力の元に飲み込まれた。
 そして、あなたは今ここにいる。
 自分の価値観を持ち、自分の倫理を持ってこの世界の少数の異分子として。
 今、世界は変革の時を刻み始めるのか。さもなくば停滞して滅亡するか。
 あなたはその答えを自分で探さなければならない。

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