星詠亭奇談第二部
Second Stories

0.「辺境都市」フィーラ
 フィーラはファラレアの中でも希有な存在である。
 その本質は中立であり、フィーラは俗に中立都市群ともよばれる。
 だが、その中立とはどちらにも味方しないと言うわけではなく、逆にいろいろな国の役に立つことによってその存在を認められようと言うものだ。
 その主な「役割」は次の二つ。
 まずは、フィーラの北方に広がる未開の地、辺境。その辺境への入り口としてのフィーラ。これは主に騎士や錬金術師、月姫などに対してのものだ。また、彼らが見つけてきた辺境に点在する「遺跡」、およびその財物に対しての諸業務もフィーラの役目である。ファラレアに出回る貴重な品のほとんどはこういった手段で諸国に供給される。
 そして、情報の集中する地としてのフィーラ。無法騎士を束ねる騎士組合が供給する情報屋の数々。神那の情報網「姉妹」達や「草」、ルーンの錬金術組合、アーミテイツの騎士団下部組織などもフィーラにその情報の網を張り巡らしている。
 そう。フィーラとは裏を返せば各国間の調整や陰謀の代理舞台でもあるのだ。

 さて、以上のことはあくまで一般人にはあまり関係のない事柄である
 だが、最近ある噂がフィーラ中に流れ始めた。
 辺境に「ティス」とよばれる場所が出来たという噂である。その場所には騎士もいず錬金術師もいない・・と。あくまで民草が自らの力で生きる場所だと。人が人を越えたものに一方的に従属するのではなく人によって生きる場所だと。そんな噂が密やかに流れ始めた。
 だが、国や騎士、錬金術師、月姫、セラピストなどは一部の者以外、まだそれを知らない。
 今は、まだ、知らない・・・。

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